本研究は複数の発電事業者が電力系統に接続し、電力供給する場合を想定し、電力系統の信頼性を経済的な評価が可能である短期限界費用を用いて、電力システムの経済的運用の指針となる発電計画決定手法を開発することを目的とする。 現在、本研究の基礎的部分となる1)直流最適潮流計算および短期限界費用の算定プログラム、2)火力発電機起動停止計画決定プログラムの開発を行っている。ただし、現段階では問題を簡単にするため、電力系統に生じる送電線過負荷潮流等のセキュリティ上の制約は考慮していない。 また、目的関数として、1)発電コスト最小化、2)発電事業者の利益最大化、3)社会コスト(電力発生コスト+電力購入コスト)最小化の比較検討を続けている。 現在得られている知見として、1)発電機コスト最小化の場合、需給バランスが満たす限り、比較的高効率の発電機のみで出力配分を行うため、発電機の起動台数が必要最小限となり、発電コストが低く抑えられている。しかし、その反面、電力購入費用に関係する需要家接続の短期限界費用が上昇するため、電力購入費用および発電事業者の利益も増加する結果となった。次に、2)発電事業者の利益最大化の場合、上記の1)と同じ結果となった。最後に3)社会コストの最小化の場合、社会コストの大半を占める電力購入費用を低減するために、比較的多数の発電機が起動する傾向がみられ、その反面発電コストが上昇することが確認された。
|