研究概要 |
風力発電の普及が進むにつれて,落雷や台風による被害が数多く報告されるようになった。特に,雷害により当初の発電目標を達成できない風力発電設備が多く,落雷や台風の多い我が国の風土に合った風力発電システムの開発が望まれている。 風力発電システムは丘陵地や海岸近くの平坦な場所等,大地雷撃密度が大きな地域に建てられることが多く,さらに,より多くの風資源を得るため,周囲に高構造物が少ない場所に建設される場合が多い。そのため,風力発電システムに多くの雷撃が集中する傾向がある。IEC規格においては,風力発電システムの雷保護方策が定められているものの,風力発電システム雷撃時の雷被害発生メカニズムが解明されている状況であるとは言い難い。 風力発電システムの雷被害は,雷撃時に雷サージ波頭部に発生する過電圧によるものと,長波尾雷によるエネルギー的破壊に分類される。本研究では,前者の過電圧発生メカニズムの解明を目的として実施した,風力発電システムの縮小モデルを用いた実験的検討をおこなった。 風力発電システム雷撃時に雷サージ波頭部に生じる過電圧のメカニズム解明を目的として,縮小モデルを用いた実験的検討を行った結果について述べる。検討の結果,塔脚の電位上昇により,塔脚と連系線等外部から引き込まれた導線との間,および,タワー内に施設された引き下げ線の下端と外部からの引込み線の間に耐雷設計上問題となるような過電圧が発生することがわかった。また,タワー内の主回路や制御回路がループ状の回路を形成する場合には,誘導による過電圧や誤動作に注意を要することが明らかとなった。さらに,避雷導線を有するブレードの先端に雷撃があった場合,および,ナセル後方に雷撃があった場合のサージ伝搬現象を明らかとし,今後,EMTP解析モデルを構築するために必要な基礎的知見を得ることができた。
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