研究概要 |
本研究の目的は、化合物半導体低損傷プロセスによる高密度量子ナノ集積構造の形成手法と、その表面および界面のナノスケール制御手法を開発し、量子集積回路実現のための基礎技術を確立することである。平成16年度の研究成果は以下のようにまとめられる。 1.分子線エピタキシャル成長法(MBE)により、ガリウム砒素(GaAs)(001),(111)B加工基板上へ量子細線構造の選択的成長を行い、その形成メカニズム/サイズ制御性について調べた。実験および成長シミュレーションの結果、加工基板が持つ結晶面の違いにより材料原子の拡散/取り込まれ量が異なり、その表面拡散論的な成長機構により、形され複雑なGaAs細線の形状が説明されることがわかった。これらの結果を基礎とし、適切な加工寸法と成長条件を選ぶことにより、この方法で形成されるGaAs細線の位置とサイズを数nmオーダーの精度で制御することを可能にした。 2.MBE選択的成長法により、窒化ガリウム(GaN)(0001)加工基板上に、GaN/AlGaN量子細線構造の形成を行った。<1-100>方向および<11-20>方向に沿ったメサ構造を形成し、成長過程を比較した結果、<11-20>方向加工基板にのみ、成長時間による細線サイズの制御が可能であることが分かった。細線を六角形状に接合したヘキサゴナル細線ネットワーク構造の形成にも成功し、GaN系量子細線デバイスの高密度集積化の基本構造として展望が開けた。 3.シリコン(Si)超薄膜による表面不活性化技術を、GaAs(001),GaAs(111)B加工基板上に形成した量子細線構造に適用し、その効果を調べた。表面不活性化膜がない場合、GaAs細線の表面障壁層が薄くなると、PL発光強度が著しく低下するのに対し、Si不活性化膜を適用した場合、低下したPL強度は再び回復することが分かった。この一連の振る舞いが、量子細線表面に存在する高密度表面準位を介した非発光再結合により説明可能であることを実験および理論計算から示し、Si不活性化膜が表面準位密度を効果的に減少させ、量子細線構造の表面不活性化に有効であることを示した。
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