本年度の研究では、これまでに問題になったβ-FeSi_2単結晶のキャリア濃度制御を中心に研究開発を進めた。Zn溶媒を用いた結晶成長条件を全面的に見直した結果、低キャリア濃度でも大型の結晶が成長できることがわかった。更に、この結晶を用いた光学測定を行い、吸収特性、偏光反射特性、フォトルミネッセンス特性を詳細に明らかにすることができた。特に、これまで0.85eV程度と考えられていたβ-FeSi_2の禁制帯幅が0.7eV程度であることや、近赤外領域で非常に大きな屈折率を持つこと、さらには屈折率の異方性が大きいことなどを明らかにした。これら主な研究成果の詳細は下記の通りである。 1.Zn溶媒を用いた溶液温度差法での結晶成長で、溶質原料にFe_2Si_5を用い、更に温度差を40℃以上にすることでGa溶媒を用いた場合と同程度の結晶が成長できるようになった。また、この結晶のキャリア濃度は室10^<17>cm^<-3>でこれまで報告されている最も低キャリア濃度のβ-FeSi_2結晶と同じ程度のキャリア濃度を示すことがわかった。 2.低温から室温の範囲でβ-FeSi_2バルク結晶の光吸収測定を行い、β-FeSi_2が間接遷移型であること、またその禁制帯幅が室温で0.7eV程であることを明らかにした。 3.禁制帯幅以下に対応する波長の光に対してバルク結晶の偏光反射測定を行い、その干渉縞から屈折率を正確に測定した。その結果、0.6-0.7eV付近で5.5程の高い屈折率を持つこと、さらには屈折率の異方性が大きいことを明らかにした。
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