研究概要 |
日本電気株式会社との受託研究契約に基づき微細デバイス試料を入手し、電流検出電子スピン共鳴スペクトロスコピー(Electrically Detected Magnetic Resonance:EDMR)による微量の点欠陥の検出を試行した。試料はゲート長0.11μmのn-MOS型シリコンMOSFET (Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)が10,000個1チップ内に細密配置されたもので、トランジスタ間はshallow trench isolationにより分離されている。現在の集積回路のスタンダード仕様にあたる。その集合トランジスタのドレイン電流を使ってEDMRを測定したところ、2種類の点欠陥を検出することができた。当補助金で研究を開始する前に、ゲート長0.25μmのn-MOS型シリコンMOSFETでEDMRを検出しているが、その時の点欠陥と同種のもの(シリコン空孔-酸素複合体V_2O_xと、V_6以上の大型空孔-酸素複合体)であった。つまり集積回路のスケーリングが進んでも依然としてこの2種類の点欠陥が残留していることが分かった。今回の試料のドレイン領域のドーパント濃度はイオン注入プロセスにより10^<13>/cm^2にコントロールされており、欠陥密度はその1/100以下の10^<11>/cm^2以下と推定されている。ドレイン面積は0.05μm^2×10,000個=500μm^2であるので、今回検出に成功した欠陥の数は500μm^2×10^<11>/cm^2=5x10^5個以下であると予想される。次のステップとして、ゲート長0.11μmの単独トランジスタの測定を行うべく測定試料の作製にとりかかった。この試料では欠陥数が1/10,000、すなわち50個程度にまで減少する予定であり、当研究が目標としている単一欠陥検出が試行できるレベルになる。
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