ゲート長0.10μmのシリコンnチャネルMOSFET中の極微量の結晶欠陥を検出するための電流検出電子スピン共嗚(EDMR)測定に挑戦した。昨年度は最初のトライとして10000トランジスタ集合TEG(Test Element Group)の測定を行い、10^6個未満の欠陥の検出に成功した。今年度はさらに1トランジスタTEGの測定を試みた。試料は日本電気/エルピーダメモリ株式会社製である。結果としてノイズが大きく有効なEDMR測定が出来なかった。原因は、当該TEGパッド電極の周囲に不要な配線(他のTEGの配線)が走っており、これらの配線とボンディングワイヤー間で不安定な干渉が起きているためと判明した。そこで、8インチウェハ全面を絶縁膜で覆ってパッド電極のみを開口させる追加加工を行うことになった。年度内の試料の準備は不可能となったため、微細デバイス中の単一欠陥が絡んだ別のテーマを追求することにした。それはDRAMのVariable Retention Time(VRT)現象である。この現象は、DRAMの記憶保持時間が高温において1桁超の劇的な可逆的2値変化を示すというものである。微細MOSFETにおいて単一欠陥が引き起こす2値動作Random Telegraph Noiseと類似しており、ゆえに単一欠陥の関与が疑われる。そこで、私達のEDMR評価で観測されているシリコン空孔-酸素複合欠陥が起源となっているのではないかと仮定し、当該欠陥の示すリーク特性、双安定性、熱活性化挙動を調べたところVRTのそれと一致しうることが明らかになった。この解析結果はApplied Physics Lettersに投槁中である。また、VRTが見られる70℃以上の温度の方が単一欠陥のEDMRにとって有望なのではと考え、室温〜250℃の範囲でEDMR測定ができるような超小型試料通電加熱機構の開発を行った。
|