研究概要 |
Si基板上へのGaN結晶成長において、界面に存在する欠陥に起因するマイクロクラックが存在する。この欠陥のために、Si-Gaの形成が促進され結晶成長中にGaNおよびSi基板が融解することが問題となっており、Si基板を用いたGaN結晶成長の問題である。我々は、MOVPE法を用いSi基板上へAlN薄膜を作製し、HVPE法によるGaN結晶成長を試みている。この結果、AlN層が保護膜として働きGa-Si反応を抑制することが分っているが、完全に融解反応を抑制させるには不十分であった。 本研究では、AlNの膜厚を45nm,65nm,190nm,340nmと変化し1050℃にてGaNの結晶成長を行った。AlNの膜厚が増えるにつれて、Si-Ga反応に起因するGaNの融解は劇的に改善され、膜厚190nmの場合、5%程度の領域で融解は存在するもののほぼ均一なGaN結晶が得られた。電子線励起による発光を調べた結果、AlN膜厚の増加に伴い発光強度も増加し、GaNの結晶品質が向上したことが明らかとなった。しかしながら、AlN膜厚が340nmの場合、MOVPE成長後にAlN保護層自体にSi基板との熱膨張係数差によるクラックが生じ、良好な結果を得ることは出来なかった。これらの結果から、AlN厚膜を高品質に作製する必要性があり更なる研究が必要である。次に、AlN膜厚が190nmの場合に、GaNの成長温度を1000℃に変化しHVPE結晶成長を試みた。1050℃の場合、わずかにGa-Siの反応がみられたが、1000℃の場合Ga-Siの反応は全く見られず、基板全面で高品質なGaN単結晶が得られた。成長速度は35μm/hであり、GaNの厚膜化を期待できる結果を得た。
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