本年度はNQR信号を感度よく測定するため、センサコイルおよびSQUID素子を用いて実験を行った。走査型のセンサヘッドを構築するためには構造が単純で小型化が可能な設計が好ましい。そこでまず、デュプレクサを用いた単一コイルでのNQR信号の検出を共鳴周波数3.3MHzの物質ヘキサメチレンテトラミン(HMT)を用いて行い、高感度検出の実証をおこなった。具体的には銅のプレートリングを用いてサンプルからの信号を20〜30cm距離をおいた状態でも検出できるように、検出系のチューニングをおこなった。このセンサをミニチュアライズすることによって空間分解能を向上させることができる。また、SQUIDを用いた測定では、まずは比較的大型の高温超伝導SQUID素子と広帯域のSQUID駆動回路を用いてHMTからのNQR信号を検出することに成功した。さらにSQUIDによる直接検出が有利となる、1MHz以下の周波数域において応用上重要となる硝酸アンモニウムについて約500kHzでの共鳴信号を観測し、その他の物質についても基礎データの取得をおこなった。走査型NQR測定用のXY走査ステージを設計し、NQR信号を2次元的にスキャンしてコンピュータに取り込み画像化するソフトの導入をおこなった。また、NQR信号直接観測用のSQUID素子についても、高感度なrf-SQUID素子およびデュワーを購入し、素子の自作についても準備を進めた。
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