電気配線の組織制御因子の決定には、多結晶組織成長予測可能なモデルが必要となる。ここで、フェーズフィールド法は、材料ナノ・ミクロ組織形成過程を予測する手段として注目を集めている。しかし、多結晶組織の予測モデルには支配方程式に論理背景が異なる支配方程式が存在するなど計算結果の定量性に対する不確定要素がある。ここで多結晶体を表すフェーズフィールド支配方程式には、結晶相とは別に界面接触角を第3のフェーズフィールド場とするモデルと、結晶粒を独立のフェーズフィールド場とするモデルに構成される。 本研究では、後者モデルに対して多結晶組織成長への主要影響因子である界面エネルギーが組織形成に及ぼす影響、また計算結果の定量性の評価を行った。 結果、まず始めに界面エネルギー値が異なる界面から構成される3重点での力学平衡がヤングの式を満たしていることを確認した。さらに、界面形状(力学平衡形)の保持または界面形成・消失にエネルギーのどちらが相成長過程を支配しているかを、3重点の移動方向に界面エネルギーの増加する界面を配置した場合と移動方向と垂直方向に配置することによって評価し、界面形成エネルギーが主に3重点の移動を支配していることを明らかにした。また、界面の移動速度が実験値と良い一致を示していることを得た。ここで、一般に界面エネルギーの測定は困難とされており、本研究でも界面エネルギーはパラメータとしての取り扱いを行ったが、実験結果を一致するエネルギー値は実験報告例と一致する結果を得られたことから、結晶粒を独立のフェーズフィールド場とするモデル(マルチフェーズフィールドモデル)が、多結晶組織予測に対し、定量性を持つことが確認できた。
|