研究課題
有機トランジスタを高機能デバイスとして応用するためには抵抗値が低く、高い周波数に対しても十分速い応答を示さなければならないため、素子には高い移動度が要求されてきた。我々のグループでは、ペンタセンを用いてフレキシブルな有機トランジスタとしては世界最高水準である移動度1[cm^2・V^<-1>・s^<-1>]以上を実現し、その作製プロセスを確立してきた。本研究で用いる有機トランジスタの作製手順は、(1)フレキシブル絶縁材料であるポリイミドシートを基板として用い、その上にゲート電極を金蒸着することにより作製する。(2)液状ポリイミドをスピンコートすることによりゲート絶縁膜を作製する。(3)有機材料としてペンタセンを蒸着する。(4)最後にペンタセン上にソースおよびドレイン電極を金蒸着することにより作製する。なお、金(電極部分)やペンタセン(有機層)を蒸着する際にメタルマスクを用いることにより、それぞれの電極や有機層は必要な形状にパターニングする。ここで素子の大きさ、形状、厚み、ゲート絶縁膜の厚みそして用いるすべての材料に対して入念な選定を行うことにより高い移動度を示すフレキシブルトランジスタの作製に成功した。本研究では、有機トランジスタをプラステックフィルム上に作製するため、極めて大きな可撓性を持つことが大きな特徴であるが、これまで歪みとトランジスタ性能の関係は明らかではなかった。そこで本年度は、このようにして作製したペンタセンを用いたフレキシブル有機トランジスタに、圧縮・伸張歪みを系統的に加えたときの電気伝導特性・ホール電圧・閾値電圧を測定し、有機トランジスタの形状変化と伝導特性・移動度・キャリア数の関係を明らかにした。また連続的に曲げて歪みを加えた後、元の形状に戻したときトランジスタに残る歪みの影響を原子間力顕微鏡や走査型電子顕微鏡などを用い、伝導測定とあわせて直接観察によっても歪み効果を調べ、より歪に強いトランジスタの作製を試みた。その結果、(1)曲率半径2mmの歪みに対しても殆ど特性の変化なく動作する有機トランジスタの作製に成功し、(2)歪み下での系統的な特性変化はペンタセン分子間距離の変化に由来すること、(3)極度の歪みによるトランジスタ特性の劣化は、有機半導体部分ではなく基板フィルムに由来すること、が示された。
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