近年のインターネットの爆発的な普及により、高速、大容量といった特長をもつ光通信の重要性がますます高まっている。光通信システムでは、光信号の高速化に向けての研究が進められているが、光信号のオン・オフを電気的に制御する現在の方式ではその高速化に限界があるため、今後は光信号を光で制御する全光スイッチや全光波長変換が重要になってくると考えられる。全光スイッチや波長変換を構成するデバイスには非線形性が必要であり、これまで、半導体光増幅器、電界吸収型光変調器や光ファイバを用いた研究が進められている。この中で、電界吸収型光変調器は、小サイズ、高速・低電圧動作が可能などの優れた特長を有している。そこで本研究では電界吸収型光変調器を用いた全光スイッチ・波長変換の開発に取り組んだ。 今年度は有機金属気相エピタキシャル成長法を用いてInGaAlAs多重量子井戸電界吸収型光変調器の作製プロセスを確立し、波長1550nmにおいて3Vの逆バイアス電圧で18dBの消光比(静特性)を達成した。作製したInGaAlAs電界吸収型光変調器の、全光相互位相変調特性を測定し、静特性において5dBmという比較的低入力光パワーで全光スイッチングに必要なπ位相シフトが確認された。また全光相互位相変調の波長依存性を用いて、一つのInGaAlAs多重量子井戸電界吸収型光変調器において、静特性で15dBmの入力光で30dB消光比をもつ全光波長変換を達成し、また10Gbsの高速光信号に対しても全光波長変換を達成した。これらの研究成果は1件の国際会議にて発表し、2件の国際会議にて発表予定である。
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