System in Package (SiP)の一般化に向け、チップ間の信号伝送をワイヤレスで行う研究が盛んになってきている。これにより信号線の機械的接続が必要なくなるため、コストダウンや伝送の高速化が期待できる。電源伝送についてもワイヤレス化する技術が確立すれば、一切機械的接続することなくSiPにチップを収めることができるようになる。昨年までの研究で、電力の伝送手法としてオンチップのインダクタを用いた磁界による伝送が、平板キャパシタの電界による伝送より優位であるという結果が得られたので、本年度は磁界伝送の高出力化を進めた。 0.35ミクロンの一般的なCMOSプロセスで製造された1次側、2次側の両チップの700μm角の領域に、1次側1.0nH、2次側9.3nHのインダクタを形成し、チップ間で最大出力電力2.5mWを伝送可能であることを実測で確認した。このときの周波数は650MHzである。出力電力は2次側の負荷抵抗の大きさに依存し、本実験の場合には100Ωのとき、最大出力が得られた。 また実験では、チップ間距離による出力電圧依存が得られた。両チップを極近い距離で接近させた場合には出力電圧は大きく、最大1.6Vを得ることが可能であるが、チップ間距離を600ミクロンまで離せば、電圧は0.6Vにまで低下した。 今後の更なる出力電圧の向上のためには、2次側のインダクタに並列に共振キャパシタを接続することで、最大電力を9.8mWにまで改善できるであろう見通しを得た。
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