研究概要 |
昨今話題となっている磁気カードのワイヤレススキミング等の情報漏洩に対抗するため,従来の電磁波を用いた方式ではなく,空中での減衰が大きいことを利用した超音波によるICカードシステムの提案をした. 基礎実験として,空中での電力伝送効率の良かった共振周波数60kHzの超音波振動子を用いた試作機を作成し,カードリーダ・ライタからICカードへの伝送を想定した模擬実験を行った.その結果,以下の成果が得られた. ・リーダ・ライタとカード間の距離 0〜16mmで最大伝送速度 2.4kbpsで各種ファイルを誤りなく伝送可 ・リーダ・ライタとカード間の距離 0〜60mmにおいて伝送速度 1.2kbpsで各種ファイルを誤りなく伝送可 なお,リーダ・ライタとカードが密着状態で単一文字であれば4.8kbpsでの情報伝送が可能である. 上記の実績に関しては平成17年3月23日に電子情報通信学会2005年総合大会にて研究発表を行った.(論文番号A-20-1)リーダ・ライタからカードへの情報伝送に関しては提案した手法でICカードとしての伝送距離要求は満たしているので,今後は伝送速度の高速度化が課題となる.そのためには, ・振動子の残響抑制(音響的対策) ・復調回路へのフィルタの導入(回路的対策) ・搬送波周波数の再検討 ・変調方式の再検討 等があげられる. また,カードからリーダ・ライタへの情報伝送に関しては,振動子を2対用いることで対応する予定であったが,模擬実験段階において空中における超音波の減衰が予想以上に大きいことが判明し,提案手法からの変更を検討する必要がある. よって,平成17年度は情報伝送速度の向上とカードからリーダ・ライタへの情報伝送に焦点を当てた実験を行う予定である.また,当初の予定通り,システム全体の数式モデルの導出にも取り組む予定である.
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