平成17年度においては、準ミリ波帯およびミリ波帯で高利得・高能率が期待され、かつ、大量生産可能な簡素な構造である逆相給電一層構造導波管スロットアレーアンテナの高利得・高能率化を目的として、以下の検討を行った。(1)本研究により提案されたスロットを直線状に配列した逆相給電導波管平面アレーを設計するため、スロット単素子の解析モデルを構築した。本解析モデルは、方形導波管の広壁中央に置かれたスロットおよびスロット励振するための壁構造の摂動素子により構成される。2次元的に配列されたスロットアレーの外部領域における素子間相互結合を考慮するため、導波管の外部に周期境界条件を導入した。(2)本研究費により導入された3次元有限要素法電磁界シミュレータ(Ansoft HFSS)を用いて上述の単素子モデルを解析し、摂動素子長に対する反射・透過特性の変化を求めた。なお、設計・解析周波数は25.33GHzとし、スロット長は共振長と設定した。解析の結果、摂動素子自身が有するリアクタンス成分の影響により、透過位相が30°〜50°前後の比較的大きな値を示した。そこで、このリアクタンス成分を打ち消すため、スロット長を共振長よりやや短く設定すると透過位相の値は最大で15°以内に抑制されることが明らかにされた。(3)単素子モデルの解析結果を基にして、一様開口分布となる16素子アレーの設計を行った。スロットの放射量は摂動素子長により制御し、スロットを一定の間隔で配置するためスロット長は透過位相の値が最小となるように設定した。なお、アレーの反射量を抑制するため、ビームチルト設計を採用した。その結果、一様な励振分布が実現され、放射パターンの第1サイドローブレベルは-13dBとなることを確認した。以上のことから、本研究により提案された新しいスロットアレーの設計手法を確立した。
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