Matching Pursuitsは、符号化対象信号に適した辞書を用いて信号を近似する手法であり、信号電力が最も大きい信号成分から近似を行うため、低いビットレート時に高い符号化効率が得られる。動き補償予測とMatching Pursuitsを組み合わせた低ビットレート画像符号化アルゴリズムの開発を目的としている。 本年度の研究によって得られた成果は大きく以下の2つである。 1.Matching Pursuits符号化では、対象画像の近似に用いる辞書が、再生品質に大きく影響する。そこで対象画像をサブバンド分割し、各帯域の周波数特性に適した辞書を設計することで、符号化効率の向上を試みた。その結果、低ビットレート時の効率を維持したままで、比較的高ビットレート時の符号化効率が向上した。また、帯域分割画像のサブサンプリングに伴い、帯域に応じた辞書サイズでの縮小を行うことで、符号化処理時間の削減も実現した。 2.動き補償予測において、勾配法の一種である最急降下法を用いた動きベクトル検出の高速化を行った。その際に最も問題となる局所解問題に対する手法として、適応的な初期値設定と、階層化手法を適用し、局所解への陥りを低減した。この手法により、Full Searchに近い予測特性のまま、動きベクトル検出の計算量を大幅に削減することが可能となった。 現在、学習によるMatching Pursuitsの辞書設計法と、幾何変換による、二次元分離可能な斜め輪郭状パターン辞書の実現に関する検討を進めている。
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