VICS用アンテナでは、低仰角方向から天頂方向への放射特性が要求され、また、ETC用アンテナでは天頂方向のみであるが、円偏波を放射する必要がある。さらに、ETCでは、双方向通信であるため、広帯域な周波数特性が要求される。本研究では、放射特性、リターンロス特性に着目し、数値計算により提案するアンテナの特性解明を行なった。以下に明らかになった特性を示す。 1.放射特性 周波数がVICS帯では、ショートピン部で電流振幅が最大となり、このショートピンからの放射が主放射となる。したがって、提案するするアンテナは、垂直方向モノポールアンテナとして動作し、低仰角方向が最大放射となる。また、ETC帯では、ショートピン部での電流振幅はほぼ零であり、放射に寄与せず、2つのパッチ部からの放射となる。これらのパッチは縮退分離素子付き方形パッチとして動作し、天頂方向に円偏波を放射する。 2.リターンロス特性 VICS帯では、上下パッチ上の電流が逆向きに流れるため、VSWRが2以下となる帯域幅は1.2%となり、従来の方形マイクロストリップアンテナと同程度の帯域幅しか持たない。しかし、誘電体幅を厚くすると帯域幅は増加し、帯域幅の改善は誘電体幅を用いて行なうことができる。ETC帯では、アンテナのスタック化効果により、VSWRが2以下となる帯域幅は10.5%となり広帯域となった。また軸比3dB以下となる帯域幅は2.4%であった。提案するアンテナのリターンロス特性はVICS、ETC帯ともに、VICS・ETC用アンテナの仕様を満たしている。 また、本研究では、実験による数値計算結果およびアンテナ実現性の評価も行なった。試作したアンテナの実験結果は、放射特性、リターンロス特性ともに数値計算結果と良く一致しており、数値計算結果は有効である。また、提案するアンテナの構造は簡易なため、その実現性は非常に高い。
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