研究概要 |
無線通信システムの伝送速度の高速化においては,各端末局の送信電力が増大するため干渉電力が大きな問題となる。特に室内環境においては、様々なシステムが比較的小さいエリアに密集して存在するため、システム内干渉のみならず、システム間干渉も大きな問題となる。このような室内環境においては、受信時において受けた干渉に対して耐性を高めるといった被干渉対策技術よりも、予め送信時において干渉となる電力を放射しないといった与干渉対策技術が非常に有効となる。私は、このような干渉対策技術として、端末局にアダプティブアレイアンテナを設置し、アダプティブアレイアンテナの放射指向性制御により、干渉となる方向に対しては電力の放射を行わない伝搬経路制御による干渉抑圧方式を提案してきた。また、提案方式では、端末局に設置したアダプティブアレイアンテナの指向性制御技術として、干渉波となる方向が端末局の周りに一様に分布せず、ある一定の角度広がりをもつ性質を利用して、その方向に広く深いヌルを形成することで限られた自由度で効率よく干渉放射電力を低減するDeep Null Creation Technique(DNCT)およびWide Null Creation Technique(WNCT)の提案を行ってきた(平成16年度)。 平成17年度においては、提案方式をDS-CDMA(Direct-Sequence Code Division Multiple Access)方式をアクセス方式とするシステムへ実装し、計算機シミュレーションを用いて提案方式の有効性を評価した。その結果、提案方式は基地局における干渉電力を大幅に低減し、各セルに2端末ずつ配置したストリートセル環境において、従来方式の特性を大幅に向上させ、ビット誤り率10^<-3>において劣化率5%を実現可能であることを確認した。
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