研究概要 |
本研究は秋田県と山形県の県境に位置する鳥海山(2236m)から地下水が湧出している日本海沿岸部を対象とし,沿岸海域における自然現象とリモートセンシングデータとの関連を明らかにすること,並びに得られた結果と生態系の分布状況との関連を求め,データベース化することを目的としている。本年度,得られた成果を以下にまとめる。 1,海底湧出地下水による水温変化などの海面情報とリモートセンシングデータとの関連を解析するため,海底湧出地下水に関する研究が行われている北海道利尻島を対象とし検討を加えた。具体的には,マルチスペクトルデータであるランドサットTMデータと湧出地点の海面情報との関連について検討を加え,対象地域における海底地下水湧出地点推定のためのモデルを構築した。 2,対象地域(秋田県象潟町)の現地調査を行い,湧出地下水を測定した。その結果,年間を通じて水温がほぼ一定温度であることを確認した。また,現地の専門家から海底地下水の湧出状況や地形状況に関する知見を得た。さらに,海底地下水の湧出状況と代表的な生態系である岩ガキの成長・分布状況との関連についても知見を得た。 3,ランドサットTMデータと現地調査による結果との関連について検討を加えた。また,解析に必要となるパラメータの選定を行い,海底湧出地下水が海面温度に与える影響についてシミュレーションを行った。その結果,湧出地下水の影響による海面温度変化の推定にリモートセンシングデータの活用が有効であることを明らかにした。 4,リモートセンシングデータを用いたデータベースを構築し利便性を向上させるためには,取得データから雲域・海域・陸域などを自動的に選定する必要がある。このため,種々のあいまいさを考慮可能な自動クラス分類法を提案した。また,データの分解能を向上させる手法についても検討を加え,これらの有用性を明らかにした。
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