研究概要 |
近年,建材や壁紙,それらに使われる接着剤等から発生する有害な化学物質による室内空気汚染が深刻な問題となっている.本研究は,室内汚染を植物の持つ空気浄化作用を用いて改善するシステムの開発を目的としている.本年度の研究では,数種類の植物を対象として空気汚染浄化能力の違いを検討するとともに,植物生体内の浄化メカニズムの解明を目的として生体電位測定およびその信号解析を試みた. まず,酸化スズ系ガスセンサを用いて行った植物の空気汚染浄化能力については複数の植物でその能力の高さを確認した.また,生体電位反応では,直流成分,交流成分それぞれの測定を試みた.直流成分データは比較的緩やかな応答であるため捉えやすいが,交流成分データは,振動が大きく複雑な挙動を示していたため,線形解析手法の一つである周波数特性について調べるとともに,非線形解析手法の一つでカオス性とも密接に関わりのある,時間遅れ座標への時系列データの再構成を試み評価を行った.その結果,直流成分測定では汚染ガスに対する数時間にわたる緩やかな反応を捉えた.また,交流成分データの解析から,ガスの注入によって周波数成分が変化すること,またその変化が植物の種類によって異なることがわかった.さらに,時系列データの時間遅れ座標への再構成を試みた結果から,ガスの有無や光の有無,さらに光の種類によって再構成軌道が変化する様子を捉えた. これらの結果から,植物の生体電位によって植物の空気汚染浄化能力を評価でき,この反応を空気汚染浄化システムへと利用できる可能性が示唆された.
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