平成16年度は研究環境の整備、並びに、データ収集整備、統計的パターン認識理論の構築を中心に研究を行った。研究環境の整備では、簡易脳波解析装置の導入、解析用PCの設置を行った。データ収集では、室蘭工業大学SVBLの協力の基、音素単位での脳波の反応測定実験を行った。無音環境下での脳波と比べ、国際10-20法での測定の結果、右脳頭頂部から右脳後頭部にかけての範囲に強い反応が現れることを確認した。言語情報は左脳言語野に広く反応が現れることが知られていたが、音素単位では言語としてではなくイメージとして伝達されていると考えられる。これは、脳波をインタフェースとして利用する場合、音素情報をイメージとして利用することが可能であることを示唆している。この結果については、被験者数が不足しているため継続的に被験者実験を行う必要があると共に、より詳細な計測実験が必要と考えられる。 次に、脳波の個人差を吸収する適応手法の前処理として、適応パターンへの学習法として利用できる識別学習法の構築を行った。具体的には、最小分類誤り識別学習の高速化、汎化性能の双方を向上させる手法を提案した。最小分類誤り識別学習は高い識別性能を有するが、過剰適合の問題を抱えていたため、これを正則化手法により解決した。提案法により汎化性能の大幅な向上が実験的に確認された。正則化を用いることで、二次計画問題による汎化性能の保証が得られた反面、アルゴリズムの複雑化に伴う学習全体の計算量増加問題が発生する。この計算量問題を軽減するために、学習手順を階層化し、パターン空間を効率良く絞り込む手法を合わせて提案した。これは広義において、マージン最大化におけるマージン絞込みと同等の効果があると考えられるため、高い認識性能と少ない計算量での学習が可能となり、実用性の高いパターン学習が構築できたと考えられる。次年度はより詳細かつ大量のデータ収集、解析は勿論のこと、適応手法と学習法の融合、及び、実際の脳波データに基づいたインタフェースの実装を行う予定である。
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