研究概要 |
近年,複数企業間における電力,スチーム,中間製品などの取引計画の最適化を行うサプライチェーンの最適化が求められている.従来は,計画最適化に必要な全ての情報,すなわち,在庫コストや,製品価格などの全ての情報を企業間で共有し,全体を一括して最適化するシステムが開発されてきた.しかしながら,競合する企業間では,これらすべての情報を企業間で公開することは望まれない.したがって,これらすべての情報を利用することなく,各企業の局所情報のみを利用して,全体の最適化を行う手法を開発する必要がある. そこで,本研究では,複数企業間の入出荷計画問題に対して,限られた情報のみを利用して,全体の計画を分散的に最適化することを可能とする,ラグランジュ分解調整法を用いた複数企業間におけるサプライチェーンの最適化手法を開発した.通常のラグランジュ分解調整法は,ラグランジュ乗数を用いて,いくつかの制約を緩和し,元の問題を部分問題に分解し,部分問題の最適化と乗数の更新を繰り返すことによって解を調整しているが,実行可能解を得るためには,全体の情報を利用したルールを採用する必要がある. 本研究では,複数企業間の入出荷取引計画問題に対して,拡張ラグランジュ分解調整法を用いることにより,企業全体の情報を共有することなく,各企業で求められた暫定的な取引量の情報交換のみでサプライチェーンの最適化を行えることを示した. また,他の分散型手法と比較し,提案手法は限られた情報下での計画最適化において,最適解からの評価値のずれが3%以内という優れた解の導出が可能であることを示した. さらに,各企業が資材調達部門,生産部門,および製品出荷部門を持つ複数企業間のサプライチェーン計画問題に対して,提案手法を適用し,サプライチェーン計画問題においても,部分的な情報のみ利用により,評価の優れた計画の導出が可能であることを示した.
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