研究概要 |
脳・機械インタフェースシステムにおいて、入力インタフェース(脳→コンピュータ)は,(1)脳の多数の神経細胞の活動を感知する多重電極の技術,(2)重畳して観測される多数の神経スパイク波形を弁別する技術,(3)神経スパイク系列から意味のある情報を取り出す技術から構成される.本研究では,(2)の改良を行っている. 平成16年度では、まず、サンプルデータを取得するために、モルモットの脳より摘出した海馬フライス標本に多極電極を刺入して多細胞記録を行い,オフライン処理にて波形パターンに基づいたスパイス弁別を行った.このデータを以下のアルゴリズムの性能評価に利用した. 次いで,多チャネル記録されたスパイク波形データの確率分布の幾何学的構造を利用したブラインド信号分離アルゴリズムの開発とその性能評価を行った.多重電極で記録される神経スパイク信号は,互いに独立な信号源から発生した信号が瞬時混合されたものと仮定できる.信号空間には,それぞれの信号源に対応する直線状の分布がつくられる.Linら(1997)はこのことに注目し,ハフ変換をブラインド信号分離に利用することによりし,優れた分離性能が得られることを示した.本研究では,ハフ変換の代わりに,クラスター分析法を用いることによって,ブラインド信号分離を実現する手法を考案した.Linらの手法,本手法,及び,これらと異なるアルゴリズムであるノンホロノミック法を用いて,マルチニューロンスパイク信号の分離を試み,性能を比較した.その結果,いずれも同程度の精度で分離可能であることがわかった.しかしながら,計算量やパラメータチューニングの容易さなどの点ではノンホロノミック法の方が優れており,本手法の改良が必要であることがわかった.今後は,リアルタイム処理に適したブラインド信号アルゴリズムの選択,及びその改良が課題である.
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