研究概要 |
本研究では,脳・機械インタフェースシステムの入力インタフェース(脳→コンピュータ)において,重畳して観測される多数の神経スパイク波形を弁別する技術の改良を行っている. 平成17年度では,単一チャネル電極を用いた多細胞記録法において優れた神経スパイク弁別能力を有することが報告されているウェーブレット変換を用いた手法を,多重電極を用いることによって多点記録された多細胞活動データに適用できるように,拡張と改良を行った.具体的には以下の手法を開発した.(1)神経スパイクの振幅の変動に対してロバストな波形センタリング法,(2)クラスタリングに有用な特徴量を選択するための確率分布の形状の評価方法の改良,(3)計算量を減らし,クラスタリング性能を向上させるための漸次的クラスタリング法の定式化. これらの手法を,モルモット海馬スライス標本のCA3領域においてテトロード電極を用いて記録された実験データに適用し,主成分分析を用いる従来法と性能を比較した.その結果,提案手法の方がクラスタリングの性能が優れていること,さらに,計算するウェーブレット係数をクラスタリングに利用するもののみに限定することによって,計算量が主成分分析法を用いたものの半分程度に低減できることが示された. しかしながら,このアルゴリズムを用いてリアルタイムでスパイク弁別処理を行うには,まだ現在のパーソナルコンピュータ水準の計算能力では不足であることがわかった.そのため,Digital Signal Processor (DSP)やField-programmable Gate Array (FPGA)等の高速演算に適したハードウェアを利用することが必要になる.次年度以降波、この点について検討し,実装することが課題である.
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