研究概要 |
本研究では地震予知システムへの応用を念頭に,井戸の高精度水位計測について研究を行っている。今年度は,定在波を利用した水位計測の適用例として,浴槽の水位計測を考えた。つまり,高齢社会を迎え,老人の浴室内での事故が増加しており,浴室内の事故を外部より監視するシステムの開発が望まれていることから,浴槽の一角に音響センサを取り付けたパイプを取り付け,パイプ内に生じる定在波の周波数を見ることにより,浴槽水位をリアルタイムで計測する方式である。なお,定在波の周波数から水位を計測する方式では,パイプ内の温度を知る必要があるため,まず始めに音響センサと温度センサを併用する方式を考え,次に,パイプの形状を工夫することにより音響センサのみで水位を計測できる方式を考えた。この計測システムにより,音響センサにより得られる直接的な音情報から入浴者の行動を推定できる(別途提案)と共に,浴槽水位を見ることで入浴者が浴槽及び洗い場のいずれに居るかを推定でき,浴室内の事故監視に適用できることがわかった。(雑誌論文1,2,6番目に関連) また,水位計測とは異なるが,定在波を用いた気柱長計測の応用例として,雑音の大きい環境下における管長の高精度計測,管端の開いた分岐管における音響センサの最適配置に関する研究などに取り組み,成果報告を行った。(雑誌論文3,4番目に関連) さらに,定在波を用いた水位(気柱長)計測システムの他の適用例として,音響センサではなく加速度ピックアップを用いることにより,コンクリート柱の長さ計測及びクラックの検出・位置計測を行うことを考えた。この方法では,山間部の地盤の緩い箇所に打ち込まれている土砂崩れ防止用のコンクリート杭の頭の部分に加速度ピックアップを取り付け,その近くをハンマーで軽く叩くことにより弾性波(定在波)を生じさせ,コンクリート杭の長さ,あるいは大きなひびが入っている場合にはひびの箇所までの距離を計測することができる。これにより,土砂崩れ防止用のコンクリート杭の健全度を見ることができることがわかった。(雑誌論文5番目に対応)
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