研究課題
平成16年度に開発した「免疫組織学的手法に用いる薄組織切片の弾性率分布計測に適した走査型顕微鏡」の開発を継続すると共に、開発した装置を用い以下の手順で肝臓の硬変に関する以下の知見を得た。1.組織を生理的条件に維持したままに計測するための特殊なチャンバーを開発した。組織が水溶液に浸った状態では高感度の計測が実現できないため、スライス切片をメンブレン上に半浸法させ、センサが接触する表面にはポリ-L-リシン薄膜(約100nm)を張り水分の蒸発を防ぐと共にセンサの物理的接触条件を一定とした。2.ラットを実験動物として用い、チオアセタマイド(TAA:200mg/kg)注入法により硬変肝および慢性肝炎モデルを作成した。血液を生理食塩水で環流した後に臓器を取り出し、振動式マイクロスライサーを用いて固定せずに薄層切片を作製した(厚さ50〜300μm)。測定範囲900μm×900μmを30μm刻みで計961点計測した。現行のシステムではマイクロタクタイルセンサの周波数計測におけるサンプリング(毎秒200サンプル)が律速となり、計961点の計測に15分程度を要した。3.測定した薄層切片をアザン染色し、細胞質と膠原繊維を同定した。比較的厚い切片であるために、測定した表面のみを染色させるたアザン染色の各浸透時間や方法を改良した。4.ラット慢性肝炎において細胞質部位19.6±3.02kPa、膠原繊維部位43.6±8.54kPaであった。硬変肝では細胞質部位13.6±6.24kPa、膠原繊維部位43.0±7.73kPaであった。病状によらず各部位の弾性率はほぼ同じ値を示し、硬変肝の進行に伴い臓器が硬化するメカニズムは膠原繊維の蓄積と3次元構造の構築にある事が示された。
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