研究概要 |
本年度目標としたところは,1)サンプル値制御理論を用いたディジタル画像信号の最適圧縮・復元,また2)音声合成,楽器音合成へのサンプル値制御理論の応用である. 1)については,まず,画像解像度変換にサンプル値制御理論を導入し,従来法である双線形法や双3次法に比べてより自然な処理が行なえることを示した.また,JPEG圧縮画像に顕著たあらわれる「モスキートノイズ」および「ブロックノイズ」を軽減する手法をサンプル値制御理論にもとづき開発した.アナログ特性を考慮した設計により,特に人物画像や自然画像において従来のJPEG画像よりも自然な復元が可能となり,また雑音と画像のエッジをしきい値で区別する非線形処理を施すことにより,サンプル値設計の自然な復元とエッジ保存を両立させることが可能となった. 2)については,音声合成・楽器音合成におけるピッチの決定に必要な非整数遅延フィルタ(Fractional Delay Filter)の設計をサンプル値制御を用いて行なった.非整数遅延フィルタの設計ではサンプル点間の補間が重要であり,その最適補間はサンプル値制御理論を用いてはじめて達成される.特に楽器や音声の合成の場合,アナログ特性を考慮しなければ不自然な合成音となってしまう.本研究により,サンプル値制御を用いたフィルタ設計が可能となることが示され,さらに設計は線形行列不等式によって容易に行なうことができることも示された.また,アナログ特性が1次のローパス特性の場合,設計パラメータを変数として設計でき,これによりフィルタをアダプティブにすることが可能となった.
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