研究概要 |
サンプル値制御理論を導入することにより,従来のディジタル信号処理では考慮されることのなかったナイキスト周波数以上の周波数成分をも最適に復元する手法を確立し,これをもとにマルチメディア情報の新しい処理を考案した.具体的には,「JPEG画像・MPEG動画信号のノイズ除去」,「ΔΣ変調器の最適設計」,「弦楽器のディジタルモデリング」,「スプライン補間システムの設計」の研究を行い,従来法よりも優れた処理法,設計法を開発した.JPEG画像・MPEG動画のノイズ除去では,高周波ノイズであるモスキートノイズやブロックノイズをサンプル値H∞最適なディジタルフィルタで除去し,さらに高周波の情報(画像のエッジ)を保存するために,非線形処理(εフィルタ処理)を採り入れた.これにより,従来法(メディアンフィルタ処理等)よりも優れたノイズ除去性能を得た.また,ΔΣ変調器の設計では,非線形フィードバックの特性を解析し,その安定条件を得た他,オーバーサンプリングの特性をサンプル値制御理論で捉えることにより,ナイキスト周波数以上の成分を考慮した周波数整形の定式化を行った.このような定式化は,従来では行われていなかったものであり,なおかつ従来法よりも優れた変調器が設計可能であることを示すことができた.また,弦楽器のディジタルモデリングでは,部分空間同定法を用いて楽器の同定を行い,少ないパラメータで弦楽器の音を再生する機構を提案した.これは従来法であるサンプリング法よりもはるかに少ない記憶素子で実現でき,携帯電話等への実装が可能である.さらに,スプライン補間システムの設計では,非因果的なシステムを因果的なシステムで近似する際に,H∞最適化を用い,従来よりも周波数応答において良好な性質を持つスプライン補間システムを設計することができた.
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