研究概要 |
本研究は,これまで数値的解法しか得られていなかったサンプル値制御系の感度,および相補感度低減化問題に対し,解析的な解を導くことによって,サンプル値制御系の性能を劣化させる要因を明らかにすることを目的としたものである.そのために,サンプル値制御系の問題と純粋な離散時間系の問題が,エイリアスの影響を反映した周波数重み関数(以下,エイリアス因子と呼ぶ)によって密接に関連していることに着目し,エイリアス因子の性質,および純粋な離散時間系の性能限界を明らかにした上で,サンプル値制御系の性能限界を導くという手法をとった.まず,エイリアス因子の性質に関して明らかにしたことを以下に示す. 1.エイリアス因子は安定かつプロパーな有理関数であり,そのH∞ノルムは1以下である. 2.エイリアス因子のシステムとしての次数は,制御対象の次数より1次だけ小さくなる. 3.サンプリング周期をゼロに近づけたときのエイリアス因子は,制御対象の相対次数のみで決まるある関数に漸近する. 次に,純粋な離散時間系の性能限界について得られた結果を示す. 1.感度低減化問題における純粋な離散時間系の性能限界は,相補感度低減化問題における性能限界に一致する. 2.これらの性能限界は,制御対象の不安定極,不安定零点,および離散化零点に依存する. 3.サンプリング周期をゼロに近づけたときの性能限界の挙動は,不安定零点の有無によって異なる. サンプル値制御系の性能限界については,現在のところ1次系に関しては厳密な解析解が得られている.一般の場合に対しては厳密解は得られていないが,上と同様の結果が得られている.一般の場合に対するサンプル値制御系の性能限界の厳密な解析解を得ることが今後の課題となる.
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