研究概要 |
本研究ではビークルに代表されるような人間-機械フィードバック系が,優れた操縦性能(制御性能)を達成するための支援制御系の性能解析および設計手法を提案することを最終的な目標としている.そこで平成16年度においては研究課題の達成に向けて,機械系の位相特性が人間-機械フィードバック系の閉ループ制御性能に支配的な影響を持つかどうか解析を行った.本研究ではNealら(Neal and Smith, J.Aircraft, 1971)が行ったテストパイロットによる航空機のピッチ角制御実験のデータを利用し,本研究で提案している機械系の位相特性に注目する新たな観点から操縦性能解析を行った.52種類の機械系(1種類の航空機と52種類の支援制御系の組み合わせ)について,Pilot Rating(パイロットコメントに基づく客観的評価基準)およびH2サーボ性能という二つの基準に基づき操縦性を解析した結果,機械系の位相特性と操縦性の密接な関係が観測された.すなわち,機械系(航空機と支援制御系からなるインナーループ)の操作入力から制御出力までの応答特性における位相交差帯域(位相遅れが180度以下であるような周波数帯域)が十分広ければPilot RatingとH2サーボ性能の両方の意味で人間-機械フィードバック系の制御性能が準最適化され,かつ両者の性能基準において準最適化される帯域もほぼ一致することが確認された.この解析結果は,本研究が指摘する,人間-機械フィードバック系と機械・制御系統合化設計の問題設定の類似性に基づく予想と一致している.また自動車のレーンチェンジ運動の数値解析からも同様の関係が観測された.これらの中間結果より,人間-機械系の操作性評価基準として機械系の位相交差周波数に注目することが有効であることと,特定の人間モデルに依存しない支援制御系の設計基準が存在することが示唆された。
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