研究課題
本研究では、出力オーバーサンプリングを利用した時間一周波数領域における閉ループ系の直接同定アルゴリズムを提案し、アルゴリズムの特徴と有効性を明らかにする。時間領域と周波数領域において、出カオーバーサンプリングされた対象プラントのモデル表現と入出力信号に含まれる重要な性質を解析することにより、出力オーバーサンプリングされたプラントの入出力信号が周期定常信号であり、サイクリックスペクトル密度をもつことを明らかにする。そこで、オーバーサンプリングされた観測出力信号のサイクリックスペクトル密度とサイクリック位相を用いた対象プラントの周波数伝達関数の数学表現を与え、プラントの入出力信号のサイクリックスペクトルから、閉ループ系の直接同定アルゴリズムを提案する。また、本手法で必要となるサイクリックスペクトル密度を推定するために、ペリオドグラムに基づいた高効率の計算アルゴリズムを提案し、その計算手順を明らかにする。さらに、ペリオドグラムの性質により、スペクトル密度の推定誤差を解析し、スペクトル密度とモデル推定の誤差評価方法を提案する。提案する同定アルゴリズムでは、外部テスト信号の有無にかかわらず、またコントローラの構造に関する従来の可同定性条件を満たさなくても、入出力のサイクリックスペクトルのみから対象プラントのシステム同定ができる特徴をもっている。また、ペリオドグラムを用いた入出力信号のサイクリックスペクトル密度の推定するので、周波数領域の同定アルゴリズムを簡単な計算で実現でき、推定誤差の評価も容易に行える。提案手法では周波数領域においてモデルパラメータを推定しており、不安定な極をもつ対象や極が単位円に近い数値的に悪条件の対象に対して、従来の時間域同定で有効な同定結果が得られなかった場合においても、安定な同定結果を与えることができる。従来の同定アルゴリズムの推定結果との比較を通して、提案手法が不安定系の同定に対して有効であることを示し、提案手法が制御システムや通信システムのモデリングで適用できることを明らかにする。
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International Journal of Innovative Computing, Information and Control 3(5)(to be published)
Electronics and Communications in Japan, Part 3 89(12)
ページ: 10-19
電子情報通信学会論文誌A J88-A(10)
ページ: 801-813