本研究では、フィードバックループ内に接続された制御対象の入出力信号からダイナミックスの変化をリアルタイムで検出するための閉ループ同定に基づくアルゴリズムの開発を行っている。従来の閉ループ同定法では、開ループ同定の手法をそのまま閉ループ系から得られるデータに適用したいわゆる直接法と、まず感度などの閉ループ特性を推定してから次に同定対象の推定を行ういわゆる間接法とに分類できる。直接法では推定値のバイアス誤差の問題があり、間接法はバイアス誤差の問題を回避できるがそのオンライン化が困難であった。 平成17年度では、まず前年度に得られた同定手法のオンライン化、つまり、逐次型閉ループ部分空間同定アルゴリズムの導出を行なった。研究成果を第49回システム制御情報学会研究発表講演会で口頭発表した。つぎに、前年度に導出した閉ループ部分空間同定法よりもロバストな数値計算を可能にするため、行列分解法の一つであるQR分解に基づくMOESP型閉ループ部分空間同定法の導出を行った。本結果は開ループ部分空間同定法の有力な手法であるMOESP法の閉ループ同定への拡張と位置づけられる。研究成果の一部を第34回制御理論シンポジウムにて口頭発表した。また、The 17th International Symposium on Mathematical Theory of Networks and Systemsに採択され、2006年7月に口頭発表する予定である。さらに、まとめた成果を計測自動制御学会論文集に投稿し、同論文集の2006年6月号への掲載が決定した。変化検出に関して、部分空間同定法で推定可能な拡大可観測性行列の部分空間の主角度に基づく変化検出法を提案し、The 3rd International Symposium on Systems & Human Scienceにおいて口頭発表した。
|