研究概要 |
本年度の研究では,まず,セメント硬化体中の微細空隙構造についてのモデルの高度化を行い,養生温度およびフライアッシュ等の混和材の影響を適切に評価可能なモデルとした.その上で,セメント改良土および未改良地盤材料における土粒子間の連結空隙モデルを導入し,熱力学理論を展開した.セメント硬化体中の微細空隙中と同一の手法を採用することで,異なるスケールにおける事象を連続的に表現可能とするとともに,土粒子間空隙の粗大性を考慮した水の粘性やKnudsen拡散の検討を行った.そして,セメント系複合材料の長期耐久性能を検討するために,カルシウム溶脱モデルを導入した.イオン平衡モデルおよび空隙スケールを考慮したイオン移動モデルから構成される.これら提案手法の妥当性についての検討結果について,以下に列記する. 1)セメント改良土におけるセメントの水和反応を,W/Cが大きく異なる配合(25,100,200%)に対して断熱温度上昇試験により検証し,コンクリート中の水和と同一の枠組みで改良土の水和反応が精度良く評価可能であることを明らかにした.2)セメント改良土における含水状態を,低水セメント比配合供試体の封緘条件下の内部相対湿度変化により検討し,改良土では骨材内部に含まれる水の影響を考慮することの重要性が実験および解析から明らかになった.3)未改良地盤材料およびセメント改良土の透水係数評価について,解析結果を透水試験結果と比較検討し,本解析手法の妥当性を確認した.4)セメント系複合材料のカルシウム溶脱解析を行い,外部地盤あるいは地下水の特性が大きく影響することを確認した.5)セメント改良土では空隙構造が粗大であるために,わずかな動水勾配であっても移流が生じ,溶脱現象にも大きく影響することが解析上確認された.6)移流条件下でのセメント改良土の溶脱試験を行った結果,移流速度が溶解速度よりも速く,平衡関係が崩れることが示唆された.
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