研究概要 |
本研究は,合成短繊維を少量添加することでコンクリートの収縮ひび割れを低減・防止することの実用化を目指すものである。研究は二つの柱からなり,(1)すでに剥落対策を目的として少量の短繊維を使用しているJR東日本の構造物を中心に,実構造物での繊維のひび割れ抑制効果を調査すること,(2)繊維がコンクリートの収縮ひび割れを抑制するメカニズムを解明すること,を並行して進めた。 実搆造物の調査は,新潟中越地震の影響もあり,JR東日本の構造物の調査は平成17年2月になってから本格的に開始した。現時点では繊維の効果を結論付ける段階にはないが,平成17年度も調査を継続し,調査結果を公表する予定である。 収縮ひび割れの抑制メカニズムについては,基礎的実験を重ねて,新たな知見を得た。繊維は基本的にコンクリートのブリーディング(材料分離)を抑制する効果があることが分かった。ただし,繊維に親水性処理がない場合,コンクリートの水を加える前に繊維を添加する場合(先添加)は,ブリーディングの抑制効果がないことが分かった。ブリーディングを抑制する場合は,繊維がコンクリート中の水分を捕捉しているものと考えている。そして,ブリーディングを抑制した繊維は,ペーストのプラスチック収縮ひび割れを明らかに抑制し,親水性処理のない繊維や,繊維を先添加した場合は抑制効果が小さくなることが明らかとなった。これらの実験事実から,繊維がペースト中の水分を捕捉することで,ペーストの急激な体積変化が抑制され,プラスチック収縮ひび割れが抑制されたものと考えた。また,この効果に加えて,従来から言われている繊維のひび割れ間の架橋効果もひび割れ抑制に寄与していると考えている。 現時点では,特殊な条件で発生するペーストのプラスチック収縮ひび割れの抑制効果を明らかにしたに過ぎず,コンクリートの収縮ひび割れとの関連性を明らかにすることが次年度の課題である。
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