構造物における若材齢時のコンクリートは、水和の進行に伴って複雑な温度・応力履歴を呈する。本年度は、クリープ試験を通じてコンクリートにおける水和の進行とクリープ性状の相関関係を把握するために、若材齢時の水和組織を極力保持した状態で、それ以上の水和進行を抑制させるために、練混ぜに用いる水の一部を同体積のアルコールで置き換えたコンクリートおよびモルタルを対象として圧縮クリープ試験を行い、アルコール置換による水和抑制効果とクリープ挙動に及ぼす影響について検討を行った。また、異なる応力履歴においてクリープ試験を行い、クリープ挙動の履歴依存性について検討を行った。 また、鉄筋コンクリート部材の時間依存変形特性におけるコンクリートの影響を把握するため、曲げ荷重を持続載荷した鉄筋コンクリート梁部材について実験を行い、コンクリートの乾燥収縮や部材の鉄筋量の違いをもとにクリープ・変形特性に及ぼす影響の把握を行った。 本年度の研究で得られた知見を以下にまとめる。 1 試験期間中の水和進行を抑制させてクリープ試験を行った結果、長期材齢時におけるクリープ特性の傾向がみられたことから、若材齢時のクリープは水和進行の影響を大きく受けることが推察された。 2 セメント硬化体における微細空隙中の液体の特性がクリープおよび回復クリープの発生機構上、重要な役割を果たすことが推察された。 3 練混ぜ水の一部をアルコール置換することで強度発現が小さくなり、水和反応が長期間にわたって抑制された。 4 持続載荷を行った鉄筋コンクリート部材における曲率の経時変化と土木学会式を用いて求めた曲率の推移との比較より、土木学会式による計算値は鉄筋比の小さな部材の時間依存変形について危険側の評価をする傾向にあり、今後検討する必要があるものと思われる。
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