研究概要 |
本研究では,RC部材に発生した幅0.05〜0.85mmの曲げひび割れがマクロセル腐食に与える影響について明らかにすることを目的とし,1年間塩化物イオン水溶液を散布したRC部材内の鉄筋の腐食性状を調査した.その過程において,マクロセル腐食の生じているRC部材における自然電位,分極抵抗を測定し,その結果を用いて,鉄筋腐食量を解析的に求め,実際の腐食量との比較を行なった. その結果,以下のような結論を得た. (1)水セメント比が40%の場合には鉄筋はほぼひび割れの近傍のみにて発錆したのに対し,水セメント比が50%,60%の場合には供試体全長にわたって発錆が見られた. (2)水セメント比が40%の場合にはひび割れ幅と腐食量との間によい相関関係が見られたが,水セメント比が50%,60%の場合には相関は低かった.ただしその場合にもひび割れの有無の影響は認められた. (3)マクロセル腐食が生じている場合,鉄筋はそれぞれの位置において分極され,本来の自然電位,分極抵抗を示さない.したがってStern-Gearyの式は成り立たない. (4)マクロセル腐食解析によれば,水セメント比が40%の場合にはひび割れ位置が常にマクロセル腐食のアノードとなっているが,水セメント比が50%,60%の場合にはアノードの位置は一定しない. (5)マクロセル腐食の解析量とひび割れ幅との間にはよい相関関係がある. (6)マクロセル腐食が生じている場合にも,マクロセル腐食回路の形成による鉄筋の分極量を考慮することによって,正しいミクロセル腐食量を求めることができる可能性がある. (7)腐食全体に対してマクロセル腐食とミクロセル腐食がそれぞれ寄与する割合は,水セメント比によって異なる.
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