これまでの研究により、木部材の腐朽度を知るためには、超音波伝播速度による方法、ピン打ち込み深さによる方法、深さごとの穿孔抵抗を測定する方法によりある程度可能であることがわかった。このうち穿孔抵抗値による方法は微小な貫通孔を必要とするが、内部の劣化の部分まで知ることができるため、診断法としてはもっとも好ましい方法であるといえる。 しかしながら、この方法での出力はX-Y関係のいわばイメージであるため、腐朽度の定量化という観点では一意的に論じることは難しく、診断実務における判断指標としては抽象的である。そこで、穿孔深さと穿孔抵抗値の関係を数値的に処理することにより、残存強度を推定できる指標を考案した。 具体的には穿孔抵抗値が大きい場合は健全と考え、それらの総和に樹種ごとの補正係数を乗じて残存強度を推定する。これを軸方向健全度指数という。その部材が曲げ部材の場合は中立軸からの距離を考慮しつつ正規化した曲げ健全度指数、せん断を主体的に受ける部材の場合にはせん断面の穿孔抵抗値を処理したせん断健全度指数を同様に考慮することができる。 以上の指数について、木橋で多く用いられている西アフリカ産の硬質な広葉樹であるボンゴシ材に対して検討を行った。その結果実用的な精度で残存強度を推定することができることがわかった。ただし、年輪が明瞭な樹種においては早材と晩材の密度の違いが大きいため、さらに検討を加える必要がある。
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