研究概要 |
様々な地震被害の中で火山砕屑物の堆積した斜面の崩壊は最も悲惨な災禍に繋がりかねない.火山屑砕物が厚く堆積した斜面は世界の活火山の80%がひしめく環太平洋地域のいたるところに存在し,地震のみならず降雨時の崩壊の危険性を高めている.このような斜面では,すべりそのものを止めることが容易でないので,崩壊土砂が(1)どの程度の速度で(2)どこまで流れ下る可能性があるのか正しく評価し,それを地域防災に活かさなければならない.そのためには滑ってしまった斜面に残された"痕跡"をでき得る限り数値化し,とどめていくことが重要である.これは特定のサンプルの試験が斜面崩壊の全体像を説明するには不十分であると認識しているためである. (1)実際の斜面崩壊からの計測可能なデータの抽出:本年度は2004年10月23日に発生した中越地震で(2004年11月の写真判読(国土地理院)で)1300箇所以上あるとされた斜面崩壊のデータを収集し、これらを実大規模の地盤のせん断試験とみなし、計測しえる情報の抽出と解析を試みた.中越地震の斜面崩壊は活褶曲地形の斜面崩壊であり,本研究の対象とする「火山砕屑物」の斜面ではないが,情報抽出の手法を開発する上で格好の対象であり,この試みを行ったものである.計測(資料収集)項目は地中の比抵抗調査,崩壊斜面のレーザープロファイリング,ボーリング,などである. (2)数値解析ツールの整備:研究代表者らが開発したモデルは土塊を斜面上に広がる2次元曲面とするものである.この曲面は空間に固定されたオイラー座標上を自由に移動できる粒子点の集合で表現するもので,計算格子を動く土塊に貼り付ける有限要素法と異なり,大変形にいたっても解析が破綻することはない.各々の粒子が表現する土の柱はこれを取り巻く粒子との関係でその高さを変えることができ,これで流動中の土砂厚の変化を記述している.土砂の構成則にはhyper-plasticityを導入し,時刻暦での解析を容易,かつ合理的にしている.16年度は間隙水の影響を取り込み流動化の過程の再現を試みた.
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