研究概要 |
海浜流は3次元構造を有しており,5つの駆動力,ラディエーション応力勾配,平均水位勾配,レイノルズ応力,波動境界層のせん断力と海底面摩擦によって複雑に形づくられる.この中でラディエーション応力と境界層のせん断力は,波による流れの初期駆動力である.現在,3つの有効なラディエーション応力の鉛直分布形状が提案されている.本年度の目的は,改良ラグランジェ型を含む各ラディエーション応力の海浜流予測能力を示すことである.各形状を用いた計算結果を実験結果と比較し,3次元海浜流予測のために適したラディエーション応力の鉛直形状など以下の結論を得た. (1)規則波一様勾配地形:砕波前の各ラディエーション応力の形状は,オイラー型の場合沖向き力が水面で強く,ラグランジェ型では沖向きの力が水表面で弱くなる.他方,改良型ラグランジェと波消散型は全水深に渡って一様になる.後者それぞれで計算された海浜流の形状は実験結果と良く一致する.これらの結果は,浅水域ではラディエーション応力の鉛直形状は一様であり,岸沖流れの駆動力は波動境界層のせん断力であることを示している.一方,砕波帯では各ラグランジェ型のラディエーション応力は,オイラー型と波消散型に比べとても弱い.オイラー型と波消散型で計算された流れは,ラグランジェ型のそれよりもはるかによい. (2)不規則波の自然海浜場:波消散型と複合型ラディエーション応力による岸沖流れの計算結果は実験結果とよい一致をした.本モデルが現地に十分に適応できると言える. (3)複合型の利点は,平均水位下降を良く表せることである.平均水位の分布も強い駆動力となるので、海浜流モデルにとって重要である.一方,不規則波では砕波が一箇所でないため水位下降が小さく,砕波帯境界も不明瞭である.これらの点から,波消散型は,3次元海浜流モデルのラディエーション応力としてより適した方法である.
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