研究概要 |
本年度は,給水・給砂の非定常性と氾濫原の植生繁茂が迂曲流路の形成に与える影響について水路実験及び数値解析により検討を行った. 水路実験では,洪水時と平水時を想定し,二つの流量を30分ずつ交互に供給する非定常実験と二つの流量の平均値を与え続ける定常実験を行った.上流端からの土砂の供給は,上流端の河床位が低下しないように与えた.植生のモデルとしては,植生が土砂の輸送と河岸浸食を抑制する機能を表現するために,粉状のカオリンを1時間に1回水路全体に偏りが無いように散布した.この時,非定常実験では平水時に散布した.その結果,幅・水深比は,非定常給水の条件の方が定常給水の条件よりも小さくなることが見出された.さらに,カオリンを散布した実験では,散布していない実験よりも幅・水深比が小さくなるとともに,蛇行波長が短くなることが見出された.これらの結果は,給水・給砂の非定常性と植生の繁茂を考慮することにより,流路が網状化しにくくなり,蛇行形状が迂曲に近づくことを示していると考えられる. 数値解析においても同様の現象が再現された.ただし,数値解析における植生モデルは,水路実験と異なり,植生の流れに対する抗力としての影響のみを考慮した.従来,幅・水深比が大きい条件では複列砂州か網状流路が形成されるとされている.しかし,給水・給砂の非定常性と植生の繁茂を考慮することにより,幅・水深比が大きくなると植生の侵入機会が増えるとともに,掃流されにくいため,陸域の土砂輸送が抑制されるとともに,流れが主流路に集中するため,蛇行流路が形成されることが示された.
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