研究概要 |
平成16年度は,まず,これまでに観測した徳島県白川谷森林試験流域(徳島県三好郡山城町粟山)における林外雨,樹冠通過雨,樹幹流の水質データの整理を進め,大気-植生間の降雨水質変化過程について基礎的な知見の整理を進めた.また林外雨水質と樹冠通過雨水質の十分な観測数を確保するため,観測と機器メンテナンスが容易な徳島大学常三島キャンパスのクス(常緑広葉樹)を対象とした一雨毎の降雨水質観測を継続的に実施した.本研究の計画当初は,徳島県横野谷流出試験地(コナラなどの広葉樹林,徳島県美馬郡脇町),および徳島県奥野井流出試験地(スギの人工樹林,徳島県吉野川市)でも降雨水質の観測を計画していたが,平成16年6月〜10月に度々来襲した台嵐のために,観測装置が故障・破損するなど十分な観測を行うことができなかった. 水質観測とデータ整理の結果,植生が森林流域の水質保全機能に与える影響の評価方法については,流域での物質収支計算が必要不可欠であること,一降雨中の時間的な水質変化が森林から流出する渓流水の時間的な水質変化に与える影響は微々たるものであることなどから,降雨イベント毎に大気-植生間の降雨水質変化を検討し,それをモデリングすることが重要であることが分かった.具体的には,説明変数を林外雨水質,降雨イベントが発生するまでの晴天日数,降雨イベント中の平均降雨強度,降雨イベントの総降雨量,さらに広葉樹の場合には,葉面積を考慮して,一雨単位で樹幹通過雨濃度を推定するようなモデリングを行えば十分であるという結論に至った. 以上を踏まえて平成17年度では大学近隣にある徳島県立農林水産総合技術センター森林林業研究所の協力を得て,同構内にある複数種類の樹木(スギ,ヒノキなど)を対象にした観測を密に実施し,大気-植生域における水質変化モデリングを行い,植生の転換が森林流域の水質保全機能に与える影響のシミュレートを行う予定である.
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