研究概要 |
1)既往研究の整理 ミクロ計量経済学の分野を対象に,関連意思決定主体間の社会的相互作用を明示的に定式化した上で社会的相互作用の計測を行っている既往の研究をレビューし,それらの体系的整理を行った.また,個々の主体の学習行動や環境への適応行動を動的なモデルとして定式化し,推計を行っている計量経済モデルに関してもレビューした.一方,環境心理学・社会心理学における環境配慮行動や行動変容プロセスを扱った研究,進化ゲーム理論の分野における社会規範の創発と変容を扱った理論研究・シミュレーション研究についても整理を行い,モデル構築の参考とした. 2)環境配慮的な交通行動意識に関するパネル調査(第一ウェーブ)の実施 東京都内域在住の自動車所有者を対象に,インターネットによる意識調査を実施した.質問項目には,ロードプライシング(都心乗り入れ課金政策)に対する市民の受容意向を設け,他者の賛同率が異なる状況下での回答を要求し,モデル同定の際の基礎情報として利用する.また,環境意識に関する心理要因を測定するため,それらに関連する指標も設問として含めた. 3)交通行動モデルの定式化 1)で整理した関連研究の知見に基づいて,以降の実証分析の基礎となる理論モデルを構築した.ここでは,周辺の他者がある行動をとる割合(他者賛同率)を説明変数として組み込んだ効用関数を定式化し,ランダム効用理論の枠組みのもと,協力的行動-非協力的行動という二肢選択の状況を離散選択モデルとして定式化した.さらに,このモデルを離散時間の動的モデルに展開し,個人の学習効果・習慣形成過程を考慮可能な形へと展開した.
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