研究概要 |
中山間地における林業は採算性がとれず,多くの中山間地域で過疎化の進行と森林の荒廃が深刻化している.中山間地における森林の保全費用を直接的,間接的に森林の便益を享受する都市住民にも負担してもらおうという水源税の考え方が提唱されている.現在,水源税の理論的根拠は必ずしも明らかではないが,上流域の住民が森林開発を放棄する(森林を保全する)ことを宣言し,下流域の住民がそのコミットメントに対して支払い意思額を有するというコミットメント価値があげられる.このような水源税を通じた上下流の住民間の所得移転を分析するために,1)住民間の戦略的な意見の表明行動,2)個人間の効用の相互作用による便益の2重計算,過小計算の問題を克服しうる支払い意思額の計測方法を開発した.コミットメントの経済価値に関する理論的分析枠組み,支払い意思額の計測方法の開発を通じて,水源税の理論的根拠,および望ましい税率に関する1つの経験的な知見を得ることを目指した.森林コモンズの考え方の整理及び便益計測のためのCVM調査の調査票設計の二つを行った.まず申請者が参加している過疎地域研究会(MARG)の参加メンバーから専門的知識の提供を受けながらコモンズとしての中山間地域における森林の役割をとりまとめた.また国内外における人文地理学や林業経済学の分野で行われている森林のとらえ方を探るため資料収集を行った.調査票の設計にあたってはプレテストの実施が必要不可欠であり,そのために実際に調査対象地域へ出向いて担当者との打合せ等を行った.
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