研究概要 |
本研究では,障害者・高齢者などの移動制約者を対象とした公共交通機関を補完する個別輸送システムとしてSTサービスを取り上げ,道路運送法第80条第1項の規制緩和に伴い,2004年4月より実施されているNPO等を主体とした福祉有償運送サービス利用者を対象としたアンケート調査を実施した.アンケート調査は,通院など高齢者・障害者に顕著に見られる移動目的や,デイサービスなど代替サービスの有無やその利用状況,乗降介助や付き添いの必要性の有無といった移動制約者自身の個人属性のほか,送迎や介助・付き添いを依頼できる家族の状況など,移動制約者の交通行動に影響を及ぼしていると考えられる要因,最近の交通行動実態を明らかにすることができるよう設計し,2004年11月から12月にかけて実施した.さらに,STサービスを利用した実際の交通行動を調査・分析し,障害者・高齢者など移動制約者の交通行動特性を定量的に明らかにするとともに,STサービス導入時に発生する需要量を算定するために,福祉有償運送サービスを実施している事業者の協力を得て,各事業者の運行記録を収集した. そして,アンケートならびに運行記録を集計した結果,導入後約1年が経過した時点においては, ・STサービスを利用した移動は移動全体の約3割を占め,施設の送迎・家族の送迎と並ぶ主要な移動手段となりつつあること ・現時点の外出の約5%がSTサービスの導入によらて誘発されたものであること などが明らかとなった. 今後は,移動制約者の外出頻度やSTサービス利用に影響を及ぼしている要因を定量的に分析するとともに,移動制約者の需要に対応したSTサービス導入・運営スキームを検討する.
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