研究概要 |
はじめに,国土交通省で管理している鉄道事故統計の電子情報化を行った.データ化した項目は,事故の発生日時,発生箇所,事故原因,事故に伴う運行停止時間長,運行を取りやめた本数とした. 次に鉄道ネットワークデータ,鉄道旅客データを整備した.鉄道ネットワークデータには国土数値情報を,鉄道旅客数データは大都市交通センサスからデータを抽出して用いた. その後,鉄道事故の特性に関する分析を行った.事故に伴う運行停止時間長の確率分布を推定するに際して,鉄道事故統計には運行の遅延が30分以下の鉄道事故が完全な形で記録されておらず,ここでは生存分析の分析手法を適用して,打ち切り(トランケーティッド)された確率密度関数の推定を行った.そして打ち切りされた部分と,打ち切りされていない部分の比から,打ち切りされた(統計に記録されていない)事故の回数を逆算し,1年当りの事故発生件数を算定した. つぎに,1日当りの事故件数,事故の発生時間,事故の発生地点,事故の原因,運行停止時間長を確率変数とするモンテカルロシミュレーションのシステム構築を行った.シミュレーションを行った結果,鉄道事故に伴う時間損失額は897億円(標準偏差73.9億円)であることを示した. 現在は,モンテカルロシミュレーションの結果を地図上に表示して,どのような地域で時間損失が多く生じているかなどを示すGISの構築を進めている. また,これまでの分析では,鉄道事故時に旅客が取る「路線の迂回行動」や「トリップ中止行動」などは考慮しておらず,これらの行動を調査するためのアンケート調査票を作成中である.
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