研究概要 |
平成17年度における研究実績は以下の2点である. 1.合意形成プロセスと完成した空間デザインの質的事後評価にみる参加型整備事業の課題に関する考察 福岡市を事例対象とし,住民参加型で計画案が作成され,かつ竣工を見た13の公園整備事業を対象に,計画段階の合意形成プロセスと実際に出来上がった公園の空間デザインとの関連性を把握した,さらにそれらの知見を踏まえ,参加型空間整備事業に携わる技術者(専門家)に求められる留意点,姿勢や今後の課題について検討した.結論として,i.公園づくりにおいて合意形成プロセスの質は(1)安全対策,(2)遊具などのパーク・ファニチャーのデザインに顕著な違いとして現出する傾向があること,ii.事業期間や資金制約を背景とし,住民に「分かりやすい」ハード整備が合意形成の解決策として提案されやすいことなどを明らかにした(土木学会西部支部研究発表会において一部発表済,06年度土木計画学研究発表会(春大会)講演論文として発表予定). 2.都市基盤整備におけるコンフリクト予防のための計画プロセスの手続的信頼性に関する研究成果の論文投稿 前年度より継続して調査してきた小田急線高架化事業取消請求事件の事例検証および都市基盤整備を巡るコンフリクト事例の経年的整理を行い,コンフリクトを予防・回避するための計画プロセスを巡る手続的信頼性について検討した.その結果,まず小田急線問題に象徴される環境アセス手続主体間の独立性補強措置および第三者機関が考慮すべき課題を示唆した.さらに,コンフリクトを巡る裁判の構図等を明らかにした上で,構想から事業段階までの長い計画期間を有する都市基盤整備が留意すべき公益性とリスク評価の重要性を考察し,実体関係に基づく手続審査(評価)とソーシャルキャピタル論からの手続的信頼性の再考について論点整理を行った(土木学会論文集IVに投稿,第一次審査を経て修正論文を提出中).
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