研究概要 |
本研究では、安全な下水汚泥の緑農地利用を推進するうえでの下水汚泥中重金属の効率的な除去法を提案するために、下水汚泥中重金属の存在形態として下水汚泥中のタンパク質と関連のある有機結合態重金属類に着目し、それらの溶出機構について検討を行った。有機結合態重金属類は平成16年度に検討を行った方法により可溶性タンパク質、脂溶性タンパク質及び細胞外高分子と関連のある3つの画分に分画した。下水汚泥からの重金属溶出除去法としては、pHを硫酸により2,3,4に低下させ、それぞれのpH条件下で過酸化水素(2%)あるいは硫酸第二鉄(1.5g-Fe/l)を添加した条件といずれも添加しない条件とした。pH2では過酸化水素あるいは硫酸第二鉄を添加した条件で下水汚泥から重金属類が効果的に除去され、特に、Cuについてはその除去効果が顕著であった。そこで、重金属溶出除去操作前後での下水汚泥中の有機結合態重金属を分画した結果、硫酸第二鉄を添加した条件では細胞外高分子と関連のあるCuの含有量が低下していることが分かった。さらに、硫酸第二鉄添加による有機結合態重金属の溶出機構を明らかにするために、重金属溶出除去操作前後での細胞外高分子画分の分子量分画とそのフラクション中のCu濃度の分析をSEC/ICP-MS法によって行った。その結果、分子量が13.7〜67kDaの範囲内にある細胞外高分子と関連のある有機結合態Cuの溶出除去によるものであることが明らかになった。 さらに、より効果的な重金属溶出除去法を開発するために、低pH条件下で硫酸第二鉄と過酸化水素の双方を添加した方法による下水消化汚泥からの重金属の溶出除去を検討した。その結果、硫酸第二鉄あるいは過酸化水素単独の場合に比べて重金属の溶出が促進され、脂溶性タンパク質や細胞外高分子と関連のある重金属を効果的に除去できることが分かった。
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