水の紫外線消毒は、有害な消毒副生成物を生じず、残留影響がないとされているため、放流先生態系に配慮する観点から、下水処理場での導入例が多い。しかし近年、ある特定の条件下では、紫外線処理水に藻類や細菌の増殖を抑制する残留効果がある、との報告がなされた。紫外線に残留効果があるとすれば、放流先生態系に影響しないことを前提とした導入に、抜本的な見直しが必要となる。そこで本研究では、紫外線の残留毒性の有無を明らかにすることを目指す。 平成16年度は、紫外線処理水の河川生態系への残留影響に重点を置き、メダカの受精卵を対象として、その孵化率に及ぼす紫外線処理水の残留毒性を定量した。その結果、紫外線処理水に暴露したメダカ受精卵について、孵化率の優位な低下は観察されなかった。ただし、紫外線照射量400および2000[mWs/cm^2]の条件では、受精卵の孵化率低下は観察されないながらも細菌・かび・藻類の増殖抑制という副次的な残留影響が確認された。一方、紫外線照射量40、80、160mWs/cm^2の処理条件では、メダカの孵化も細菌等の増殖も阻害されなかった。よって、紫外線を高線量で照射した場合に何らかの残留効果が生じうるが、それはメダカ受精卵の孵化に影響しない程度であった、と結論付けられる。一方、塩素消毒水に暴露したメダカ受精卵では、全塩素の初期添加濃度6[mg/L]以下では受精卵の孵化に優位な影響は観察されなかったが、8、10、20[mg/L]においては明らかな孵化阻害がみられた。本実験で用いた紫外線照射量および塩素添加濃度は、実下水処理場での処理条件よりも高く設定してあるが、仮に事故などによって突発的な過剰消毒が生じた場合でも、紫外線消毒では放流先生態系に悪影響を及ぼすリスクが極めて低く、その点において紫外線消毒の塩素消毒に対する優位性が示された。
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