水の紫外線消毒は、有害な消毒副生成物を生じず、残留影響がないとされている。したがって、放流先生態系に配慮する観点から、下水処理場での導入が有望視されている。近年、ある特定の条件下では、紫外線処理水に藻類や細菌の増殖を抑制する残留効果がある、との報告がなされた。紫外線に残留効果があるとすれば、放流先生態系に影響しないことを前提とした導入に、抜本的な見直しが必要となる。そこで本研究では、紫外線の残留毒性の有無を明らかにすることを目指す。また、照射する紫外線の波長の違いが、不活化効果や光回復・暗回復の程度に影響するかどうか、2種類の紫外線ランプを用いて定量的に示すことを目指す。 近年、紫外線処理は、湖沼や貯水池における藻類の異常増殖を抑制する方法として期待されている。そこで平成17年度は、特に紫外線照射による藻類の増殖抑制効果に着目し、Anabaena variabilisの純粋培養株を対象として、実験・解析を行った。紫外線の残留性を定量的に評価するため、紫外線照射後の培養中における細胞数、遺伝子損傷数の変化について調べた。さらに、細胞数の変化を、モデル式にて記述することを試みた。その結果、1)低圧紫外線ランプ・中圧紫外線ランプの別によらず、紫外線照射によってA.variabilisの増殖を抑制できること、2)A.variabilisは、非常に高い遺伝子損傷の修復能力を有すること、3)紫外線照射後のA.variabilisの細胞数の変化は、紫外線照射による損傷の生成、及び、その修復を仮定したモデルによって表現できること、が示された。
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