研究概要 |
鉄筋コンクリート造部材にひび割れが生じると、部材が軸方向に伸長する。近年の設計では、梁降伏先行型を目標とするため、大地震時には梁端部にひび割れが生じ、梁が軸方向に伸長する。基礎梁に損傷がなければ、一階梁の伸長によって、一階柱に付加せん断力が生じる。一方梁には,柱の拘束によって軸方向力が生じ,梁の耐力が,軸力がない場合に比べて大きくなる。これらの効果は,現行のRC造建物の設計では考慮されておらず,一階柱の付加せん断力や梁の曲げ耐力増大によって,想定外の破壊が生じる可能性が考えられる。本研究では,梁の軸方向変形及び梁に生じる軸方向力の効果を建物の設計に取り入れる方法の提案を目的としている。 平成16年度は,RC建物の有限要素法解析プログラムの開発を行った。鉄筋コンクリート造の部材やフレームの実験結果を参考に,梁の軸方向変形と軸方向力を良く再現するよう,鉄筋とコンクリートのモデルの調整を行った。その結果,柱梁接合部の変形と主筋の抜け出しを適切に考慮することによって,実験をよく再現できることがわかった。さらに,開発したプログラムを用いて,さまざまなRC造フレームの静的解析を行い,梁に生じる軸方向力と変形を調べた。梁の伸長を拘束する力は,フレームの中央に位置する梁に関して最も大きくなる。梁の軸方向力と伸びの比,すなわち梁の拘束剛性は,一階柱の剛性によって,ほぼ表現できる。一階柱の剛性は,柱脚のひび割れ,降伏及びフレームの転倒モーメントによる変動軸力によって変化する。一階柱の剛性を見積もることによって,梁の拘束合成を予測することができる。 本研究で明らかになった梁の軸方向力の変化は,従来行われているRC造部材の繰り返し載荷実験で考慮される条件とは大きく異なるものである。梁降伏型建物では,構造物全体の非線形挙動は梁の非線形挙動によるものであり,より現実的な条件下での梁の正負繰り返し載荷実験が必要である。
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