研究概要 |
下記の接合詳細を有する座屈拘束ブレースを対象として,構面外座屈を防止するための条件を整備することを目指した. (1)梁または柱梁接合部に溶接されたガセットプレートの高力ボルト接合用の面外リブが梁フランジまで到達しておらず,面外リブのない区間が存在する場合. (2)K形ブレース交点の梁に小梁や火打ちなどの横座屈補剛材が設置されていないため,梁の構面外移動が可能な場合. まず,座屈拘束ブレースを下端接合部・座屈拘束部・上端接合部の3要素にわけ,接合部の面外リブが存在しない区間を回転バネに,ブレースが接合する梁の構面外移動を水平バネに置換した力学系を用いて弾性座屈荷重を導出した.また,座屈拘束ブレースの芯材が塑性化した後の力学系として,水平バネ剛性が小さく水平バネが変形した状態と,水平バネ剛性が大きく水平バネが変形せずに座屈拘束ブレースが「く」の字に折れ曲がる変形状態を想定し,軸力と構面外変形の関係を求めた.これらの2種類の変形状態に至らないための回転バネ剛性と水平バネ剛性の必要値を提示した. 上記の崩壊モードと座屈荷重を確認することを目的として,接合部を含む座屈拘束ブレースの単調圧縮実験を行い,以下の知見を得た. ・弾性座屈荷重が座屈拘束ブレースの芯材の降伏軸力より小さい場合は弾性座屈が生じる. ・弾性座屈荷重が座屈拘束ブレースの芯材の降伏軸力より大きく,各バネ剛性の必要値を満足しない場合は芯材の塑性化後,構面外変形の増加に伴って軸力が低下する. ・各バネが弾性を保つ範囲において,各バネ剛性の必要値を満足している場合は構面外変形が生じても軸力は低下せず,芯材の軸方向変形だけが生じる. 以上より,接合部を含む座屈拘束ブレースの構面外座屈を防止するためには,座屈拘束ブレースの最大軸力より弾性座屈荷重が大きく,かつ必要バネ剛性を満たすように設計すればよいことが明らかになった.
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